君と目が合うiNSPiC REC

 このコラムの執筆者:細川元

概要

大学院の授業「製品デザイン計画特論」にて制作した映像作品。動画では、これまでのカメラやスマートフォンにはない「撮る人と撮られる人の目が合う」という商品の特徴に着目し、女子高生の恋のストーリーを描いた。

授業最終回で選抜された13作品によるコンペ形式の作品発表会がキヤノンマーケティングジャパン本社で行われ、『1位』の評価を頂いた。なお、審査はキヤノン株式会社、キヤノンマーケティングジャパン株式会社の関係者や広告代理店の方々11名によって行われた。

ここでは3年生の皆さん(デザイン畑の住人)に向けてなので、もう少し丁寧に制作プロセスを書いておこうと思う。

制作プロセス

前提として、僕は7人チーム(留学生も含めた千葉工大生3人と千葉大生4人の混成)のリーダーをやりつつ、自身の作品も作った。
このチームだけなぜかプロジェクト感が強い人員構成になっており、他のチームは3~4人(そして全員千葉工大生)だった…

当初キャノン側から受けた商品(iNSPiC REC)の説明はざっくり下記のようなものである。

  • ターゲットユーザーとしては10~20歳代の若い女性
  • キャノンと若い世代の最初の接点にしてもらいたい
  • スマホとは違う価値提供をしたい

授業課題は、こういったことを踏まえて、ターゲットユーザーにあたる我々学生自身でプロモーションの切り口を考えて30秒の動画にする、といったところである。

開始早々こんな事を言ってはいけない気もするが、参った。
なるべくキャノン側の意図を汲みながら、ユーザーに「欲しい!」と思ってもらえる動画を作らねば…。

パッと良いことも思いつかないので、まずはアイデアがほしいところ。
そこで、リサーチである。

女子大生は周りにゴロゴロ居るので、話を聞くことは容易い。しかし、個人的には商品のカラーリングが「大学生にしちゃ、ポップと言うかビビットだなぁ…」と感じていたので、ツテを辿って女子高生の話も聞いたりした。

「普段写真をどれくらい撮るのだろう?」「どんな写真を撮っているのだろう?」「撮った写真はどうしているのだろう?」といったことをインタビューしたり、カメラロールをスクショして送ってもらったりしながら、女子高生とカメラや写真の関係をなるべくリアルに捉えようとした。

今回のリサーチの目標は「女子高生ならこうしますよ」と言えるようにすることである。
デザインの言葉で言うなら、ペルソナの価値観を理解する、という感じ。

色々インプットした後はアイデア出し。
メンバーでポストイットを湯水のごとく使って、面白い使い方やコアとなる価値観について、ひたすらアイデアの種を出す。

アイデア出しの様子

その後はメンバーが各自、アイデアの種たちを持ち帰って育てていく段階に。各々が制作する動画の「コンセプト」「着目した商品の価値」「ターゲットユーザー」といった部分を整理していく。
僕はこの段階ではざっくり下記のようなコンセプトの整理をしていたと記憶している。

コンセプト目と目が合う
着目した商品の価値これまでのスマホやカメラと違って、目と目を合わせて撮影できる
ターゲットユーザー女子高生

ここまで来ると、動画のイメージも固まってきているので、絵コンテを書いて、実際に動画を撮影・編集する段に移っていく。ここからはクオリティをいかに上げていくかである。

で、色々やって(雑)自分の分も含めて7人分の動画が出来上がった。

動画を作った後は、コンセプトの言葉や説明に使う文言などを今一度整理。
ここでコンセプト兼作品タイトルも『君と目が合うiNSPiC REC』に確定させた。

そんなこんなでプレゼンを行い、お父さん世代の方には結構キュンキュンして頂けたみたいで高評価を頂けた。
このプレゼンは選考を兼ねており、全21作品の中で、グループとしては7作中、6作が選考を突破することができた。
まぁまぁの打率でキャノンの偉い方や広告代理店の方の前で発表する機会を得られて良かったと思うが、もう一作品をなんとかできなかったのは悔しかった。

その後は冒頭で述べたようにコンペ形式の発表会を行い、1位を頂いた。(やった〜!)

制作を終えて

ここまでが、取組み内容の紹介であったが、ここからは雑感を少し。

今回やるべきことはマーケティングに片足突っ込んだようなことで、デザインっぽいデザインということではなかった。そういう課題だったので、逆にできる限りのことをやってやろうと意気込んでできたと思う。

動画の制作はほぼ初めてで、こうして出来た映像も満足できるクオリティではないのだが、まあ初めてなので一旦良しとしよう。

個人的に意識したのは「相手を説得しつつ、こっちがやりたいことをキチンと伝える」ということである。
エモいだの、カワイイだの言っても通じないし、僕らが面白いと思っても相手は何が面白いのか分からないなんてことはザラである。

通らなければ、どんなに良いデザインもお蔵入りである。社会に出る前に「通す」ことを意識したアウトプットをする機会を得られたのは良かったと思う。

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キヤノンマーケティングジャパン iNSPiC REC イベントサイトhttps://cweb.canon.jp/camera/dcam/collabo/student-rec/