卒業研究-店主と客の望ましい関係構築に関する研究-

 このコラムの執筆者:新葉星来

01.概要

個人経営店の飲食店が長く存続するために、店主と客が対等に関係構築を行えるアプリを提案しました。

背景
店主と客の良好な関係が、個人店の存続を左右する

近年、飲食店の倒産件数が過去最高を更新している。その理由として原材料費の高騰や人手不足の他に新型コロナウイルスの流行が挙げられる。コロナ禍を通して個人店の閉店が相次いでおり、これは地域の魅力を損なう結果につながっている。個人経営店はチェーン店とは異なり、来客や売り上げが減ることが倒産に直結しがちである。売り上げがゼロになることは固定費の負担を考えると収益がマイナスになることを意味する。こういった状況下でも存続している個人経営店は、店を応援する客や固定客、常連客を持つ店ではないかと考える。つまり、経営の安定に寄与してくれる固定客の獲得が、個人経営店の存続に影響を与えていると考えられる。 一方で、応援したいと思える店があることは客側にとっても大きなメリットがある。個人経営店の店主との行きつけや常連と言えるような親密な関係を築くことで、客は心地よさや特別感を得ることができる。このように、店と客の間に良い関係を作ることができれば、資本の少ない個人経営店も存続がしやすくなり、それが地域の魅力を構成するような個人経営店が増えるきっかけにもなるのではないかと考える。 しかし、現状としてお店と客の関係は希薄な場合も多く見られる。客はネットなどでの口コミや評価だけを見て店に訪れる場合も多く、このような場合は親密な関係を築くきっかけが少ないという問題点がある。希薄な関係であることが、コロナ禍になると客が全く来ないといった事例が多くある理由の一つでもあると考えられる。また、客側としても店主と関係を構築するには時間もかかり、どうしていいのかわからない、きっかけがないという声から、敷居が高いということがわかる。

目的
個人経営店が長く存続するために、店主と客の関係構築を手助けするツールを作成す

行きつけの店やその店主と客の関係性のあり方について調査することで、固定客を獲得するためにはどのような関係構築が必要なのかを探る。そして、店主と客の関係構築を手助けするツールの制作を目的とする

調査
個人経営店が存続するためには何が重要なのか、実際に店主の方にインタビューを行った結果です

01. 理想とする店のあり方は、日常の自然の流れできてもらえる場所である 
どの店主も「気軽に来てもらえる」「生活の一部になるように」「ふらっと立ち寄れる」などのお店のあり方を理想としていた

02. 客との関係では近所付き合いのようないい距離感を保つことを理想としている 
常連も新規でも同じようにフラットな対応でいい距離感を保つことを心がけながらも、ご近所付き合いのように近況を話すような間柄も見受けられた。

03. 施策を目的で来店されないように施策は導入しない 
過去にポイントカードを導入していたが、現在は使用していない店が多かった。どの店もその施策が目的になることが嫌だということと、店側がタイミングを作るのではなく、客のタイミングできて欲しいという回答が得られた。

04. 地域の飲食店との関わりを積極的に持つことで、街全体で客を共有する 
イベントやコラボ、店主自ら地域の飲食店のマップを作ったり、客となって他の飲食店に訪問するなど、地域の飲食店との関わりを意識的にもっていることがわかった。その理由として街全体でお客さんを回していくことで店の存続をしていこうという考えがあることがわかった。

考察
店主や客などの枠にはまらない対等な関係を築くことが重要である

調査から解釈すると、個人経営店が長く続くためには、店主や客といった役割にはまった関係ではなく、対等にかかわる姿が多く見られた。このような関係になった背景には、名前で呼び合うことや、街でばったり出会うなどの店主ではない一面を垣間見るということがある。こういった出来事が店主や客という枠ではなく、いち個人として認識するきっかけになり、対等な関係を築く事が必要である。

コンセプト・設計要件

対等な関係を築くためにアバターを介してつながる
・アプリ内でアバターを使用することで、先入観なく知り合い、一個人としての対等な関係を築く
・話したかったけど声をかけられない、知らない人などともアバターというフィルターがあることで関わりやすくなる
その他の設計要件
・店主でない一面を見る事ができる
・知らない飲食店との出会いの場をつくる
・地域の店主同士の繋がりがわかる

感想
1年間をかけて1人でリサーチから制作まで1人で行うことが初めてだったので、この方向性であっているのかなど先が見えないことに戸惑った事が何回もありました。卒研だから1人でやらなくちゃ…ではなくて、ゼミや研究室にいる人にとりあえず話してみるということが有効だなと感じました。他人から批評をもらうことは怖くはあるけど、アドバイスをもらえるだけでなく、伝えるために自分の考えが整理されるというメリットもあると感じました。

後輩へのアドバイス
おそらくほとんどの人が1年という時間をかけるのがはじめてだと思います。やっていくうちに行き詰ったら少し俯瞰してみることをお勧めします!特に赤研は申請書を書く段階から背景や目的をしっかり書いているので、初心に戻るのも有効的です!miroではじめまで戻ると意外とやってるなーって自己肯定感も上がるはず…本当に疲れた時は、息抜き!ドライブ!甘いもの!です!